[制度] 墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)

墾田永年私財法とは?

**墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)**は、奈良時代の743年に制定された法律です。

一言でいうと、「新しく開墾した土地は、永久に自分の財産にしてもよい」と定めた法律です。

法律が生まれた背景

この法律が作られる前の日本では、**「公地公民制(こうちこうみんせい)」**という考え方がありました。これは「すべての土地と人々は、天皇(=国)のもの」という原則です。そのため、土地は国から分け与えられており、個人の所有は認められていませんでした。

しかし、人口が増えて食料が足りなくなり、新しい田畑を作る必要が出てきました。そこで、政府は開墾を奨励するため、723年に**「三世一身法(さんぜいっしんほう)」**を制定します。これは「新しく開墾した土地は、本人から子、孫までの三代にわたって所有を認める」というものでした。しかし、これでは自分の代で終わってしまうため、開墾のモチベーションがなかなか上がりませんでした。

そこで、政府はさらに強力なインセンティブとして「墾田永年私財法」を出したのです。

墾田永年私財法の「その後」:歴史の大きな転換点

この法律は、日本の歴史を大きく変えることになります。

1. 荘園の誕生

開墾した土地が個人のものになると、裕福な貴族や大きな力を持つ寺社が、農民を使って広大な土地を開墾し始めました。こうして形成された私有地が**「荘園(しょうえん)」**です。荘園は国の税を免除されたり、国の役人の立ち入りが禁止されたりする特権を持つようになり、国が支配する公地公民制は少しずつ崩壊していきます。

2. 武士の登場

荘園が増えると、その土地を守るための武力が必要になります。こうして、武士が荘園の管理者や警護役として登場し、やがて力をつけて歴史の表舞台に立つことになります。

墾田永年私財法は、単なる土地の法律ではなく、その後の荘園制度武士の台頭という、日本の中世社会を形作るきっかけとなった、非常に重要な法律なのです。


▶︎ この法律が学べる関連用語

  • 公地公民制:律令制のもと、土地と人民はすべて国のものであるとする考え方。
  • 三世一身法:墾田永年私財法に先立ち、開墾した土地の三代にわたる所有を認めた法律。
  • 荘園:墾田永年私財法によって形成された、貴族や寺社が所有する私有地。

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