乙巳の変
乙巳の変は、645年に中大兄皇子（後の天智天皇）と中臣鎌足（後の藤原鎌足）が、権勢を振るっていた蘇我氏の首領である蘇我入鹿（そがのいるか）を暗殺したクーデターです。この事件は、続く大化の改新のきっかけとなり、日本における中央集権国家の成立を決定づける重要な出来事となりました。
乙巳の変が起こった背景
飛鳥時代、豪族の蘇我氏は、天皇の后妃を輩出することで、朝廷内で大きな権力を握っていました。特に、蘇我入鹿の父である蘇我蝦夷（そがのえみし）と、その子の入鹿は、天皇をしのぐほどの専横な政治を行い、皇族や他の豪族からの反感を買っていました。
- 蘇我氏の専横蘇我入鹿は、皇位継承をめぐる争いに介入し、自分に都合のいい人物を天皇に据えようと画策しました。これにより、皇族や有力者たちの間で、蘇我氏を排除しようという動きが強まりました。
事件の経緯
中大兄皇子と中臣鎌足は、蘇我氏を倒す計画を密かに進めていました。彼らは、入鹿を暗殺する絶好の機会をうかがっていました。
- 暗殺の実行645年、朝鮮三国からの使者を迎える儀式が宮殿で行われることになりました。入鹿は儀式に参加するため、武装を解いて臨みました。この機を捉えた中大兄皇子と中臣鎌足は、佐伯子麻呂（さえきのこまろ）らに命じて、入鹿を暗殺しました。
- 蘇我氏の滅亡この事件を知った入鹿の父である蘇我蝦夷は、自宅に火を放ち自害しました。これにより、約100年間にわたって朝廷に君臨した蘇我氏の本家は滅亡しました。
乙巳の変の歴史的意義
乙巳の変は、単なる権力闘争にとどまらず、日本の国家体制を大きく変えるきっかけとなりました。
- 大化の改新の始まり事件後、中大兄皇子は孝徳天皇を擁立し、自らは皇太子として政治の実権を握りました。そして、「大化」という日本初の元号を定め、公地公民（すべての土地と人民を国家のものとする）を掲げる大化の改新という大規模な改革を断行しました。
- 天皇中心の中央集権国家へ蘇我氏の専横が排除されたことで、天皇を中心とする新しい政治体制が築かれ始めました。これにより、豪族の連合国家から、天皇を頂点とした中央集権国家へと移行する道が開かれました。
乙巳の変は、日本の歴史におけるターニングポイントとして、後の律令国家の成立に大きな影響を与えました。
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