大正時代
大正時代は、1912年の大正天皇即位から1926年の昭和天皇即位までの、約15年間を指します。この短い期間は、民主主義的な思想が広まり、都市の文化が花開いたことから、「大正デモクラシー」と呼ばれる時代でした。
大正デモクラシーと政治
明治時代に形成された近代国家の体制が、この時代に大きく揺らぎ始めます。国民は政治への参加を求め、民主主義的な動きが活発になりました。
- 大正デモクラシージャーナリストの吉野作造が唱えた「民本主義」に代表されるように、天皇主権のもとで国民の意見を尊重し、政治に反映させようとする動きが強まりました。これにより、政党内閣が次々と成立し、議会政治が発展しました。
- 普通選挙運動都市部の労働者や知識人を中心に、男性全員に選挙権を与えるよう求める普通選挙運動が全国で展開されました。この運動は、1925年の普通選挙法の成立によって、ついに実を結びました。これにより、25歳以上のすべての男性に選挙権が与えられ、日本の民主化は一歩前進しました。
第一次世界大戦と経済の発展
大正時代は、ヨーロッパで第一次世界大戦が起こり、日本は連合国側として参戦しました。
- 大戦景気日本は戦場から遠く離れていたため、ヨーロッパ諸国に代わって物資を輸出し、軍需物資の需要が急増しました。これにより、日本経済は空前の好景気を迎えました。これを「大戦景気」と呼び、特に造船業や紡績業が発展しました。この好景気により、企業が成長し、都市部に人口が集中しました。
- 米騒動しかし、好景気の一方で、米価が高騰し、生活が苦しくなった人々による米騒動が全国で発生しました。富の偏在や貧富の差が問題となり、社会的な不安が増大しました。
大衆文化の開花
大正時代は、経済的な発展と民主主義的な風潮を背景に、都市の庶民を中心とした文化が花開きました。これを「大正ロマン」と呼ぶこともあります。
- モダンな生活都市では、電灯やガス、水道が普及し、百貨店や映画館が人気を集めました。女性の社会進出も進み、「モガ(モダンガール)」や「モボ(モダンボーイ)」と呼ばれる新しいライフスタイルが登場しました。
- 文学・芸術芸術家たちは、個性を尊重した作品を多く生み出しました。武者小路実篤が中心となった白樺派は、人道主義や理想主義を掲げて活動しました。また、竹久夢二の美人画など、ロマンチックで憂いを帯びた芸術が人気を博しました。
大正時代の終焉
普通選挙法と同時に治安維持法が制定されるなど、自由な思想を抑圧する動きも現れました。また、1923年の関東大震災は、人々の生活に甚大な被害をもたらし、社会に大きな衝撃を与えました。これらの出来事は、大正時代が終わりを告げ、軍国主義へと向かう昭和時代への序曲となりました。